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Channel: 文壇高円寺
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メガネ橋

《——ちょっと汽車に乗って、どこか田舎に出かけないか。ふと出かけるという気持だ。甲州はどうだろう》 井伏鱒二の「鹽の山・差出の磯」(一九五四年)はこんなふうにはじまる。『場面の効果』(大和書房、一九六六年)所収。「鹽の山」の「鹽」は「塩」の旧字。老眼にはつらい。...

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山下久七

 土曜夕方、西部古書会館。ブック&Aは木曜から開催だったのだが忘れてた。三日目でも郷土史関係のいい図録がいっぱいあって、財布と相談しながら棚から出したり戻したり。『文化財シリーズ24 杉並の神社』(杉並区教育委員会、一九八〇年)は、迷わず買った一冊。コロナ禍以降、散歩の範囲が広がり、これまで行ったことのなかった杉並区内の神社をけっこう訪れた。...

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久七と伊勢信仰

 高円寺の天祖神社の話を書いたが、同じ日、西部古書会館で『社寺参詣と代参講』(世田谷区立郷土資料館、一九九二年)というパンフレットも買っていた。『文化財シリーズ24...

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そうとはかぎらない

 山田風太郎著『あと千回の晩飯』(朝日文庫)の「中途半端な小説」で「あるとき、ふと自分の小説は主人公が立往生するところでラストになるものが意外に多いようだと気がついた」と述懐している。《立往生とは、自分のやった行為が果してまちがいなかったかどうか、相手の正邪を裁断したことが正しかったかどうか、判断停止の状態になる、という意味である》...

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日常の釣り

 十二月一月二月——この三ヶ月は無理をしないことを心がけている。からだを冷やさず、疲れをためず、休み休み仕事する。冬のあいだ、毎日ほぼ欠かさず腰のあたりに貼るカイロをつけている。つらいときはおなかと腰の両面につける。...

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新編 閑な老人

 二月二十二日、尾崎一雄著『新編 閑な老人』(中公文庫)が発売になりました。旧版の『閑な老人』(中公文庫)とは収録作を大きく変え、尾崎一雄が“閑な老人”になるまでの歩みがわかるように編んだ。それから元の『閑の老人』を愛する尾崎一雄ファン(わたしも)に向け、旧版の解説で高井有一が書いている「生存五ヶ年計画」関係の作品も収録した。...

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鮎川信夫とソルジェニーツィン

 鮎川信夫著『時代を読む』(文藝春秋、一九八五年)は、一九八二年~八五年のコラム集である。「ソルジェニーツィン来日の意味」にはじまり「『現代ロシア』を知る」で終わる。《ソルジェニーツィンは愛国者である。れっきとしたロシア文学の伝統の保持者であり、そのために、ソ連当局の忌諱にふれ、国外追放されたようなものである》(「ソルジェニーツィン来日の意味」)...

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世界をどう見るか

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これだけの者

 三月。水曜日夕方神保町。小諸そばで天ぷらうどん、神田伯剌西爾。東京堂書店の週間ベストセラーの文庫、尾崎一雄著『新編 閑な老人』(中公文庫)が二位だった。 先月、荻窪の古書ワルツの新書の棚で尾崎一雄著『末っ子物語』(講談社ロマン・ブックス、一九六四年)を見つける。新書版は持ってなかった。 この作品でも尾崎一雄おなじみの壮大な自問自答が見られる。...

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温厚の底

 尾崎一雄の「私の中の日本人 基廣・八束」(『単線の駅』講談社文芸文庫、二〇〇八年)は、祖父と父の話——。初出は一九七四年。...

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善福寺川

 金曜日、西部古書会館。この日、文学展パンフがいろいろあった。『NHK広島放送センターオープン記念「井伏鱒二の世界」展』(一九九五年)を三百円。ただし鉛筆書き込みあり。 酒、将棋、絵、釣り、旅……。...

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昼寝の季節

 気温二十三度。寒暖差のせいか体が重い。ロシア・ウクライナ情勢——開戦の直前までいつも通りの日々が続くと考えていた人もいるだろう。ある日突然、日常が崩れる。そうなったらどうしようと考えながら散歩して古本を読む。 河盛好蔵著『人間讀本』(番町書房、一九六六年)に「永代萬年暦」という随筆がある。初出は『風報』一九六一年六月。...

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白系ロシア人

 季節の変わり目になると寝る時間がズレる。したがって起きる時間もズレる。だいたい五、六時間ずつ後ろにズレる。今日は朝七時起。まだ頭がぼーっとしている。 河盛好蔵著『人間讀本』(番町書房、一九六六年)——本の間に日本経済新聞(一九八七年一月二十四日)の河盛好蔵のインタビュー記事の切り抜きあり。《八十四歳にして意気軒高》《息長い仕事のコツを聞くと、「仕事をしすぎないこと、人生を楽しむこと」と》...

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現実

 十六日深夜の福島県沖の地震で床に積んでいた本が崩れた。本棚の上に積んでいた本も落ちた。 東日本大震災の数ヶ月前にマンションが水漏れした時、工事に来た人から「今すぐ本棚を固定しなさい」といわれた。すぐ実行した。二十年ちょっと前、寝る部屋の本棚を腰の高さのものに変えた。阪神・淡路大震災を経験した人に注意された。こちらもすぐ実行した。...

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春の散歩

 ついこの前、三月になったとおもったらもう下旬。時は流れ、仕事は進まず、昨晩、ひさしぶりに日付が変わる時間に飲みに行く。日常が戻りつつある。 南陀楼綾繁編『中央線小説傑作選』(中公文庫)——黒井千次の「たまらん坂」を読み出した途端、引き込まれる。黒井千次は高円寺生まれと知る。「たまらん坂」所収の福武文庫、講談社文芸文庫はいずれも品切。文芸文庫は電子書籍で読めるが、気長に紙の本を探すか。...

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明るい風

 散歩のついでに古本屋に行く。今のわたしは歩くことのほうが優先度が高い。どこに行くか決めずに歩く。体にまかせる。といいつつ、だいたい同じようなコースを歩いてしまうのだが、それもまたよし。...

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化物

 四月、新生活をはじめた人におすすめしたいのは、自分の住んでいる町で何かひとつだけでもいいから定点観測(記録)をすることだ。惰性だろうが何だろうがとにかく続ける。引っ越したら引っ越し先でも続ける。 わたしは高円寺駅が自動改札になる前の写真やエスカレーターがなかったころの写真を撮っておけばと悔いている。「あの店はいつまであったっけ」みたいなことをしょっちゅう考える。...

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Ⓐさんのこと

 木曜日午後三時すぎ、神保町の古本屋をまわって新聞社に寄った。そこで藤子不二雄Ⓐさんの訃報を知った。八十八歳。悲しい気持よりも見事な人生だなと……。...

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藤子不二雄Ⓐと吉行淳之介

 瀬戸内寂聴著『寂聴コレクション vol.1 くすりになることば』(光文社、二〇一九年)は帯に瀬戸内寂聴と藤子不二雄Ⓐの写真あり。巻頭の「寂聴さん×藤子不二雄Ⓐさんスペシャル対談」が読みたくて買った。当時、瀬戸内寂聴は九十七歳、藤子不二雄Ⓐは八十五歳。対談は三十一頁。...

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自信と配慮

 吉行淳之介著『人工水晶体』(講談社文庫、一九八八年)は巻末に第二回講談社エッセイ賞の「選評」と「受賞のことば」を収録——。 井上ひさしの選評に「『エッセイとは、つまるところ自慢話をどう語るかにあるのではないか』と気付いた。(中略)もとより読者は一般に明け透けな自慢話を好まない。そこで書き手は自慢話を別のなにものかに化けさせ、ついには文学にまで昇華させなくてはならない」とある。...

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